LAの街並みを一望できる素晴らしい景観、見事な建築物、静かな庭園を誇る山城は、ハリウッド大通りに面した魅惑的な環境で何世代にもわたってゲストを迎えてきました。個人の邸宅から始まり、アジアン・フュージョン・レストランやイベント会場として知られる現在に至るまでの山城の歴史は、まるでハリウッド映画の脚本のようです。
ハリウッドの山の上にあるお城
山城の歴史は、アドルフ・バーンハイマーとユージーン・バーンハイマーの構想から始まりました。ドイツ生まれの綿花王であり、熱烈なアジア・アートのコレクターと国立公園局に表される彼らは、ハリウッドの丘の上に12エーカーの敷地を取得し、邸宅と庭園を建設。その後、ニューヨークの建築家フランクリン・M・スモールを採用、地元の建築家ウォルター・ウェバーを監修建築家として迎え、彼らのアジア美術コレクションを収蔵するメインハウスの設計を依頼しました。 1914年に完成したこの邸宅は、京都の山城地域の山にあるお城を再現したものとされていました。しかし、実際には、日本、中国、その他アジアの文化が混在したデザインとなっていました。
山城へは、手入れの行き届いた日本庭園を抜けて、丘の中腹に続く 300 段の階段を上りました。チーク材と杉材を使った10部屋の邸宅の内部は、彫刻が施された垂木は金で覆われ、先端には青銅の龍が装飾されていました。また、壁には光沢のあるシルクとアンティークのタペストリーが飾られていました。
200万ドルをかけて造園されたと言われるテラスには、3万種類の植物や樹木、滝や金魚、エキゾチックな鳥や猿がいる動物園もありました。さらに、ミニチュアの日本村の中を通る迷路のような運河には、おもちゃほどの大きさのブロンズの屋形船が浮かんでいました。
庭園を中心とした中庭には、彫刻のような植物や珍しい魚が泳ぐ石造りの池がありました。
ハリウッドヒルズホテルのプールにある、日本から運ばれた築600年の仏塔は、山城の最も有名なオリジナル建造物のひとつ。このプールは、かつてオーストラリアの珍しい黒い白鳥が飼育されていた「湖」でした。
山城のもう一つの名所である「夏の家」は、階段を上るゲストの休憩場所として丘の頂上のすぐ下に設置されました。そこに鎮座していた骨董品の仏像はゲストに人気となり、「仏像に登らないでください」という注意書きが掲示されるようになったほど。現在、山城大仏は、幸運と繁栄のしるしとして西を向いています。
ザ・400クラブ
バーンハイマー兄弟は1924年に山城を売却。1924年12月にユージーンが急逝した後、仏教美術や薩摩美術、珍しい翡翠、タペストリー、七宝焼のシャンデリアなどの美術コレクションはほとんどが競売にかけられました。
1920年代後半、山城はハリウッド黄金時代のAリストのセレブたちが集う高級クラブ「400クラブ」の本拠地として使用されたこともありました。ある噂によると、山城は1920年代には売春宿だったとも言われています。世界恐慌の時代には、山城の庭園を25セントで見学するツアーが催されていました。
第二次世界大戦
真珠湾攻撃後、ハリウッドはもとより全米で反日感情が高まり、山城は日本軍の信号塔だと噂され、造園や装飾の多くは破壊されてしまいました。
山城のアジア建築は、ペンキや板で覆われそれと分らないほどでした。また、邸宅は陸軍士官学校として使用されました。第二次世界大戦が終わると15戸のアパートに改築され、伝説のコメディアン、リチャード・プライヤーや地元ニュースキャスターのジェリー・ダンフィーなどが長年住んでいました。
トーマス・グラバーによる保存
全盛期とは見分けがつかないほど荒れ果てたこの敷地は、建物を取り壊して7エーカーの土地にホテルやアパート開発を目的に1948年トーマス・グラバーが購入。（グラバーは後に近隣のマジックキャッスルを購入）
山城の解体準備を進めるうちに、ペンキや合板の下に隠された豪華な木細工やシルクの壁紙などが見つかり、邸宅は取り壊さずに修復されることになりました。
グラバーは建物の奥の部屋に、会費1ドルのカクテルラウンジ「ハリウッド・ヒル・クラブ」をオープンし、専属の雑役夫はバーテンダーと二役をこなし、35セントで飲み物を提供していました。バーは手狭になるほど人気となり、次々と部屋を拡張し、建物の東側全体を占めるまでになりました。
山城レストランの誕生
山城によると、グラバーの息子のトーマス・Y・グラバーが大晦日にバーの客に温かいオードブルを振る舞ったのがきっかけで、山城レストランが誕生したとされています。60年代初頭、わずか4つのテーブルからスタートしたレストランは、残りの部屋にまで拡大。
その後50年以上にわたり、山城はレストラン及び何百人ものゲストを収容できる結婚式場として人気のスポットとなりました。プールの上のテラスには、街のスカイラインを背景に600年の歴史を持つ仏塔を眺めることができるパゴダ・バーが増設されました。
茶室
本館と同時期に建てられた茶室は、実際の日本の茶室を模して造られました。当時撮影された写真によると、茶室は本館とつづら折りの通路でつながっており、懸崖や滝が作られていました。1950年代後半、ティーハウスはアパートに改装され、俳優のパーネル・ロバーツ（「ボナンザ」のアダム・カートライト役、「Dr.トラッパー サンフランシスコ病院」のDr.トラッパー役）が20年間住んでいました。
ロバーツが退去して間もなく、放火により茶室は全焼。現在では、基礎部分と滝の跡のみが残っています。
モンキーハウス
モンキーハウスは元々猿を飼うために建てられたもので、洞窟のような構造の内部は猿が寝られるよう金網と石膏でできており、屋外には小さな池やブランコが設置されていました。
1950年代後半、モンキーハウスはアパートに改装され、ハリウッド大通りの大部分を所有する父を持つランディ・プリンスなどの有名人に賃貸されました。そこでのプリンスの豪華なパーティーは、ハリウッドでも有名なエピソード。その後、1978年にトーマス・Y・グローバーが快適な邸宅に改築し、1993年まで居住。その後もハリウッドの著名人たちが住んでいます。
アメリカの文化遺産に
2012年8月、山城歴史地区は国家歴史登録財に登録されました。国立公園局によると、山城歴史地区は "敷地内にある9つの建物、遺跡、構造物を含む "とされています。
映画やTVへの登場
1920年代以降、山城は数多くの映画やテレビ作品に登場し、数え切れないほどのコマーシャルや写真撮影に利用されました。1957年にアカデミー賞を受賞したマーロン・ブランド主演の映画「Sayonara（サヨナラ）」では、ジョシュア・ローガン監督が将校クラブとして山城を採用。その他、「Memoirs of a Geisha(SAYURI)」「Kill Bill(キルビル)」「Nocturnal Animals(ノクターナル・アニマルズ)」「Gone in 60 Seconds(60セカンズ)」「Blind Date(ブラインド・デート)」「A Thousand Men and a Baby(ナローエスケープ)」「Playing God(不法執刀)」「Teahouse of the August Moon(八月十五夜の茶屋)」、などに登場。1922年には、AAPI俳優のパイオニアである早川雪江が何役も演じたサイレント「The Vermilion Pencil(朱色の画筆)」にも利用されています。
1950年代から60年代にかけては、「I Spy(アイ・スパイ)」「Route 66(ルート66)」「Perry Mason(ペリー・メイスン)」「My Three Son(パパ大好き)」などのテレビシリーズでよく知られた存在となりました。
忘れられないイベントを演出
山城は、ロサンゼルスで最も人気のある特別なイベント会場のひとつで、そのロマンチックな環境と素晴らしい街の眺望が魅力です。有名なガーデンコートヤードからスカイビュールーム、よりプライベートな空間のコイルームなど、山城ではイベントやウエディングに利用できます。
